アンソニー・ホロヴィッツ著「メインテーマは殺人」を読んだ。
おススメされた経緯が 『ひねくれた元刑事とか好きでしょ?』 とか言う不順極まりない理由なのだけれども……(いやまぁ、好きなんだけどね!)
【あらすじ】
《わたし》 こと 《アンソニー》 は、元刑事で警察顧問をしている 《ホーソーン》 から、面白い事件を担当しているのでその内容を本にしてくれないかと話を持ち掛けられた。
児童向けの作品を多く手掛けていた 《アンソニー》 は、最初この話を断るのだが、
とある件で 《ホーソーン》 の提案に乗ることになり、調査に同行するうちに、
事件の内容とは、資産家の老婦人が絞殺されたのだが、その数時間前に彼女は自らの葬儀の手配をしていたのだそうだ。
彼女は自分が殺されることがわかっていたのか……?
真相を探るべく、2人は捜査に乗り出すのだった。
私はあまり海外小説は読まない。
理由は、言い回しがくどく、平仮名が多いせいで目が滑るからだ。
でもそんなこと気にならないほど、内容が凄かった。
フェアプレイとしているだけあって、小説内の主人公(一人称)の語りが、全て見ている物の描写なのである。
なので、わからないこと、理解ができないことが多く書き記されているのだけれど、これが上手かった。
↓以下若干ネタバレになるので、読む人は注意(真相には触れていない)
最初からまぁ、ミステリ小説においての王道展開が繰り広げられる。
ホームズとワトソンのように、相容れないような関係性のまま話が進んでいくため、割と関係性にハラハラしながら読んでいた。
でもこれが読んでいる側に対する罠であったと、読み終わった時点で気が付いてしまった。
悔しい。ものすごく悔しい…………!!!!
鮮やかにしてやられた感があるのだ。
一人称視点で進むため、見たもの、聞いたものしか描写がされていない。
そして、《ホーソーン》 自体もあまり大っぴらに推理を披露するタイプではない為、何を考えてその質問をしているのかなどがわからないのだ。
その為、『わからないこと』しか書いていない。
つまり、見た内容聞いた内容で理解できる『わかること』は、文章にされていないわけだ。
そこがかなり上手い描写になっていた。
確かに後から読み直してみれば、しっかり描写としてあるし、ぶっちゃけ第一章時点でもう大まかにわかっていても可笑しくないのだ。(本編中にも第一章でわかると《ホーソーン》自身が言っている)
別の事件を絡めることにより、注意を逸らして読み手に悩ませる。
その巧さが素晴らしい。
確かに、派手さに欠ける内容ではあったのだが、読んでいくうちにだんだんと怪しい人物が見えてきて、それも 《アンソニー》 と同じタイミングでいろいろ気が付けるというのが面白い読ませ方だったと私は思った。
でも、本当に悔しい!あともう少し早く『わからないこと』しか書いていなかったことに気が付けていたのなら、あと1、2章は早く犯人に辿り着けていたかもしれないのに……!
と、読みながら推理してみたところこんな感想になった。
個人的には、すごく巧いつくりをしたミステリ小説であったと。
無理のないまとめかたがキレイにハマっていく作品であったと評価できる。
ぜひ、少しでも興味を持ってくれたのならぜひ読んでほしい。
序盤だけでテェミさんがハマりそうな内容と理解出来ましたね……